倒れない基準はないのですか?
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昨今、頻発する大地震。ここで報道される被害は家屋の倒壊やライフラインの寸断。又は食料の不足、衛生面の不安などが主なところでありましょう。そんな中で、わたくしが注目していただきたい事象の一つが『お墓の倒壊』です。
震災直後にはニュース映像やSNS画像などを媒体として確かに伝えられ、相当な被害が出ていると推測される事の一つです。
しかしながら、先に挙げた生活に直結する物を優先するあまり、いつの間にか忘れられてしまうものであります。
ところで、この、お墓の倒壊による被害。どこかで補償して貰えるのでしょうか?答えは〝 否 〟です。
家屋であれば保険が掛けられているでしょう。食料やライフラインであれば、自治体等で援助して貰えるでしょう。しかしお墓にはそのようなものは無く、各個人が全てに負担しなくてはなりません。何度も繰り返しますが、生活をする為に、一時のニュースのようにお墓も忘れられてしますのでしょうか?復旧、復興の意味を考える時、各ご家庭の鑑となるお墓の復旧は欠かせないのではないか?と思うのです。
少しお金の話をさせていただきます。2016年4月に起きた熊本地震を例に挙げますと、熊本市の市営墓地7ヶ所で10,300基のお墓が倒壊しました。被害の大小はあれ、1基当たり数十万円からの負担と考えると、これだけでも数十億円に上がります。
その他、新潟、長野、東北など、全国的に見てみると、この十年余りで数百億円の被害が出たのではないかと考えます。
本題に移ります。
私は数年前より地元の自治会でお寺の世話人の役を引き受けることになりました。それからしばらくして、東日本大震災が起きました。内陸であったので津波の被害はありませんでしたが、震度6弱の揺れは大きな被害をもたらしました。
お寺の世話人ですから、被害が心配で確認に向かうと、倒壊したものや、崩れたことで隣のお墓を巻き込んだものなどを目の当たりにすることになりました。
何故、お墓は倒れるのか?
まず始めに、現状の確認と情報収集をしていきました。
そこで判ってきた事は、耐震または免震ということに対して、取り組んではいるものの数値としての根拠と技術が存在しない事でした。
製品として各方面から発表されている物は、それを使わなかった場合と比べれば確かに〝 耐震 〟であり〝 免震 〟なのでしょう。
しかしながら、それを使ったのだから〝 倒れない 〟ではないのです。
どうすれば倒れなくなるのか?
私は、この現実に対処すべく今まで培ってきた知識と技術で耐震補強が出来ないかと考えました。
長年建築業界で仕事をさせてもらっていますが、建築業界は阪神・淡路大震災以降、建築基準法が大きく改定され耐震や免震に対して確かな基準が定められています。そこで、この基準法に照らし合わせて材料を選定し、施工方法を検討する事で倒壊を防げるのではないかと考え、技術を考案しました。
何故、改善されないのか?
数年間の試行錯誤の末にシステムを構築し、墓石を取り扱う施工店様にお話をさせていただく日々が続きました。が、なかなか伝わりづらく理解されないでいました。そんなある日、ある建築石材会社の社長より、『墓石には基準がないんだよ』と聞かされました。
『はっ』としました。
伝統といえばそれまでなのですが、墓石職人の長年の経験のみによって建立されているということで、そこにはその人個人(または会社)レベルの決まり事しか存在しないということです。これでは倒れないお墓は建てられない。現に倒れているものがほとんどなのです。
今後、どうすればいいのか?
では、倒れないお墓を建てるにはどうすればいいのか?
建築のみならず、製造業や食品加工等々、多くの業界において少なからず基準が策定されています。
この地震大国ににおいて、先に述べたような大きな被害を出しているお墓に対して何らかの基準は必要ではないだろうか?
基準が一つ出来る事でその先にある課題に対して理解が深まるのではないだろうか?
幸い、墓石倒壊による人的被害は報告されていませんが、いつ起こるとも限りません。
起こってからでは遅いのです。